このページでは脳卒中による後遺症で悩む方に向けた病気の解説や、リハビリの方法を紹介します。

脳卒中とは?

脳の血管が破れるか詰まるかで、脳に血液が届かなくなることで神経細胞に障害が起こる病気です。

原因によって、1)脳梗塞、2)一過性脳虚血発作、3)脳出血、4)くも膜下出血に分けられます。50代以降に好発し、推定人数は118万人(2016年)とされています。

脳卒中はかつては死因の第一位でしたが、現在は第4位となっています。これは、発症数が減ったわけではなく、医療技術の進歩で死亡率が下がったことによるものです。(1960年には脳卒中による死亡者は10万人当たり240.3人だったのが、2013年には11.4人と激減しています。)

一般に脳卒中というと手足のマヒや言語障害などの大きな後遺症が残るイメージがあるが、若い世代では約7割がほぼ介助を必要としない状態まで回復し、50%~60%が職場復帰を果たしています。脳卒中になったとしても、元の生活に戻ることが出来る人が増えています。

一方、高齢者では介護が必要になった原因の第2位であり、発症するとなんらかの後遺症を抱え生活を送ることが多いようです。

要介護度別にみた介護が必要になった主な原因(上位3位)

ダメージを受けた場所や時間によってかわる後遺症

神経細胞がダメージを受ける場所、血流が途絶えた時間などによって後遺症の症状や程度は変わります。

大脳が障害されると半身の運動麻痺や感覚障害、ろれつが回らない。言葉が出ないなどの言語障害が主な症状です。脳幹や小脳が障害されると、ふらついて手足が動かせない(失調)、ものが2つに見える(複視)などのさまざまな症状が出ます。

脳の機能

脳卒中のリハビリは、3つの時期に分けられる

1)急性期(~2週間)

発症直後から上半身を起こして座っていられる程度までの時期です。意識がほとんどなく自分で動けない場合でも、筋力低下や拘縮を防ぐためにベッド上で行うリハビリなども含まれます。

2)回復期(~6か月)

急性期が過ぎ、日常生活に必要な動作や機能が回復する期間です。マヒや機能低下が改善し、仕事復帰や在宅生活を送るために必要なリハビリを行います。

3)慢性期(維持期)

回復期を過ぎ、状態が安定(プラトー)する時期です。6か月を過ぎると、一般的にはリハビリの効果が期待できなくなり、回復というより維持するといった考え方に切り替わる時期です。

リハビリは発症後6か月しか効果がないって本当?

一般的には脳梗塞や脳出血など脳卒中のリハビリは、6か月が経過するとそれ以上の回復が望めない時期になる、とされています。

しかし、6か月以降の慢性期のリハビリでも改善が望めないということはありません。実際に当スタジオでは発症2年経過しても歩行機能が上がり杖が必要なくなる例、装具を外しても歩けるようになる例など、特に「歩く」機能が改善する例は多くあります。

ご本人とご家族がより穏やかで幸せな生活を送れることが大切

脳卒中のリハビリでは、単にマヒを回復させたり筋肉をつけたり、歩いたりすることだけが重要ではありません。

ご本人・ご家族にとって、どのような事が出来るとより暮らしやすくなるのか、より幸せな生活を送ることが出来るようになるかを考えることが重要です。

発症以前にどのような生活を送っていたのか。趣味はなにか。どのような事に取り組んでいたのか。お住まいはどのような状況か。障害を持ったことでどのような変化があったのかなど、

その人その人のライフスタイルに合わせたオーダーメイドのリハビリが必要となります。

脳卒中のリハビリは、脳に身体の取り扱い説明書を作る作業

脳卒中によってダメージを受けた神経細胞は、それ以前と同じようには働いてくれません。

それは、外から受ける刺激に対する反応や、外から受けた刺激に対して、筋肉や関節を動かす反応が悪くなっているからです。

脳卒中のリハビリに必要なのは、現在の感覚・筋肉・動きを改めて感じる作業。病前に何気なく行っていた動作をしたときに、実際にはどう動いたか、それをどう感じたかなどをしっかりと意識し、ズレを少なくする訓練を行います。

現在の身体の取扱説明書を再度作り上げることで、たとえマヒがあっても自分の思い通り動く身体作りを行います。

人間が本来持っている、「無理のないしなやかな動き」を 学習させる

生物は本来、しなやかで滑らかな身体の動きを持っています。子供の動きをみているとよく分かりますが、しゃがんだり這ったり、ジャンプしたりと本当に色々な動きをしなやかに行います。ところが大人になるにつれてそのような事はしなくなり、同じ姿勢を続けることが多くなります。これが身体を固くする大人が多くなる理由です。

さらに、脳卒中の後遺症では、この滑らかさがさらに失われてしまします。指や手首に力が入って手が開かなくなったり、歩く時に麻痺側の力が抜けずにロボットのようなぎこちない動きになってしまいます。

これを解決するために必要な事は、ヒトが本来持っている滑らかな正しい動きを獲得すること。

歩き方が劇的に変化!ゲンテン式歩行リハビリをご紹介

①コンディショニング

リハビリスタジオ ゲンテンでは、身体の動きや機能を評価す場合、「連動」「重心」がしっかりしているか確認します。

連動とは、全身が滑らかに動いているかどうか。歩行では、「蹴り脚」「振り出し脚」「腕の振り」「身体のねじり」などをチェックします。

このチェックで問題がある場合、その部位の筋肉や関節のかたさを評価し、ゆるめます。脳卒中の後遺症の場合、麻痺側のかたさが目立ちますが、健側も負担が大きくなり硬くなっている場合もしばしば。全身のチェックを行い、歩行の支障となるかたさを取り除いていきます。

滑らかな歩行を実現するため、まずは「かたさ」を改善し、正しい姿勢や柔軟性を獲得することが重要になります。

②運動学習

かたさが取り除けたら、次は自分の力で滑らかに動かせるようにしていきます。動かなかった筋肉や関節は、最初はうまく力を入れることが出来ません。少しづつ可動域を広げながら、歩行に必要な動きを反復練習します。

ここで重要となるのは、「なに(どこ)を意識して動かしているのか。」

何も考えずただ動いているだけでは、使えない筋肉を鍛えることはできません。ただ動かすだけでなく、脳にも指令を送ることで効率の良いエクササイズを行っていきます。

当店では、全身を宙吊りにしてリラックスできる「レッドコード」を用いたエクササイズを取り入れることで、効率よくエクササイズを行っていきます。

レッドコードを使った動きの練習

③セルフケア

正しい身体の使い方が獲得できましたね。

最後に必要なのは、継続して良い状態・良い習慣を維持すること。リハビリで痛みや動きが良くなっても、それを持続できなければ意味がありません。数十年来の身体のクセはなかなか修正できないものです。

そこで、ご自宅でできるほど簡便で、かつ効果の高いセルフケア(自宅でできる体操やストレッチ)を覚えていただき、自分自身でも身体のケアが出来るようになっていただきます。

ゲンテンでは、このセルフケアの方法を冊子にしてお渡ししています。普段から目につく場所に置いておき、いつでも復習ができるようになっています。

大切なのは、「自分自身で身体のクセを知り、修正できるようになる」こと

動きや症状が改善しても、脳細胞が復活したわけではありません。

最も大切な事は、数年後(数十年後)まで身体の調子が整っていることです。そのためには、マッサージやストレッチで一時的に症状を緩和するのでなく、自分自身で身体をコントロールし、どうすれば良くなるのかを知る事が大切です。

あなたも自分自身の身体の状態を知り、将来にわたって自分の力で身体を良くしていけるよう心がけていきましょう。