自己流の限界と正しいセルフケアのあり方
「手術を避けたい」「自分の力で改善したい」「痛みなどの不調を解消したい」──側弯症に悩む多くの方が、そんな思いを抱きながら日々体操に取り組んでいます。YouTubeなどで情報を得て、努力されている方も多い一方で、次のような声もよく耳にします。
- 「体が楽になった」「背中の使い方がよくわかった」
- 「頑張ってやっているのに痛みが出てきた」
- 「やっているつもりだけどうまくいかない」
この違いはどこから生まれるのでしょうか?
運動の設計図と感覚のズレ
人は運動をする際、脳内で「運動の設計図」を作り、それに基づいて体を動かしています。この設計図は、実際の動きから返ってくる感覚によって常に調整されています。
たとえば、階段を登っていて「もう一段ある」と思って足を上げたら実際にはなかった──そんな経験はありませんか?このように、運動の設計図と現実の感覚にズレがあると、バランスを崩したり、思いがけないケガにつながったりします。
側弯症の方が「まっすぐ立っているつもりだったのに、実は背中が曲がっていた」と感じるのも、まさにこの感覚のズレによるものです。
自己流の体操がうまくいかない理由
自己流で体操を続けていると、この運動の設計図が偏ったまま更新されてしまうことがあります。つまり、誤った体の使い方を「正しい」と脳が認識してしまい、その結果として体に痛みや不調が現れるのです。
自分では「できている」「正しく動かしている」と思っていても、実際には片足に重心が偏っていたり、肩甲骨を下げているつもりが逆にすくめてしまっていたりすることも。
ストレッチや筋トレでは不十分な理由
運動の設計図を修正するには、筋トレやストレッチといった“手応えのある”動作ではなく、より繊細な感覚の調整が必要です。
筋トレは無意識に偏った体の使い方を強化しがちですし、ストレッチの「伸びて気持ちいい」「痛気持ちいい」という感覚は、実は防御反応(身長反射)によるもの。この反応は、体が本来の使い方から外れたときに起こるため、それを「気持ちいいから正しい」と受け入れてしまうと、体を壊す原因にもなります。
本当に、これでいいですか?
セルフケアの本質は、「強く動くこと」ではなく、「正しく感じること」にあるのです。
専門家の視点が必要な理由
正しい体の使い方を見極めるには、経験のある専門家の視点が不可欠です。
自分ひとりでは見えない体の使い方のクセや感覚のズレを、専門家は動画分析やリアルタイムの観察によって見抜き、適切なフィードバックを与えることができます。
誤った動きが定着する前に、それを修正しながら「体の使い方の再学習」を行う──それが、真に効果的なセルフケアへの第一歩です。
ゲンテン体操のサポート体制
ゲンテン体操では、
- オンラインリハビリ
- Zoom体操教室
- ゲンテン体操リレー企画 などを通して、専門家が丁寧にあなたの体の使い方を観察・フィードバックします。
また、複数の先生方が動画を通して多角的なアプローチを発信しているため、視点を変えて「気づき」を得られる環境が整っています。
まとめ:常識から離れて、本質に向かうセルフケアへ
側弯症のセルフケアは、ただ“頑張って動くこと”ではなく、“自分の体を正しく捉え直すこと”から始まります。
これまで「当たり前」だと思っていたトレーニングやストレッチを手放し、感覚と設計図のずれに向き合うことで、あなたの体は本来のしなやかさと強さを取り戻し始めます。
信頼できる専門家とともに、そのプロセスを一歩ずつ進めていきましょう。
セルフケアを、「文化」にするために。







お気軽にご相談ください。ご連絡お待ちしております。
セルフケアのポイント
①呼吸法で内側から歪みを調整しよう
脊柱の変形を伴う側弯症は多くの場合、手術療法や装具療法のように外力によって矯正する方法で行われております。一方で、運動療法は軽視されてきた面もあり、日本の多くの医療機関では十分なリハビリが受けられないため、たとえ「背骨が歪んでいる。右に体が折れてしまう。」と感じていても、自分で調整ができずに無力感に苛まれながら過ごしている方も多くいます。
側弯症の運動療法で、ドイツではすでに保険適応され、自分で歪みを調整することができる最も認められた保存的療法が「シュロス法」です。自身が側弯症であるドイツ人のKatharina Schroth氏は、呼吸した時に自分の肋骨の動きが左右違っていることに着目し、呼吸に意識を向けることで、背骨の歪みを自身で調整する方法を確立しました。
呼吸への意識や体の内側から変形を防ぐための運動療法は、「手術を受けたくない」という方にはオススメです。
②最近よく「前よりも背中が伸びてますよ!」と声をかけられます。(70代女性)
スタジオに通いだし1年ちょっと経過しましたが、セルフケアを教わり希望が持てます。
初めの頃はどうして自分がこんな風になるのか、わからないまま、整形外科に行って「年だからねぇ、しょうがないよ。」と言われ、痛み止めをもらうだけ。このまま歩けなくなるんじゃないかと不安ばかり大きくなっていたところに「歩き方講座」のチラシをもらい、藁をすがる思いで門を叩きました。
リハビリでは最初にビデオを撮って、自分の体の動きの悪いところを見させられましたが、思った以上に背中が曲がっていてショックでした。体を伸ばそうと思っても伸びない、そんな状態だったのが、先生に体を支えてもらうと簡単に伸ばすことができて不思議でした。何度か動き方や呼吸の仕方を教わって、自分なりにではありますが、背中が伸びてるなぁと感じることが多くなったような気がします。
姿勢の悪かった初期の頃を知っている方からは「伸びてますよ!」と声をかけられます。
今でも時々、悪くなっているんじゃないかと心配になることもありますが、その都度ビデオを撮ってもらって確認してくれるので、自信を持ってリハビリを続けることできています。
③肋骨の動きが背骨を整える鍵
呼吸をすると肋骨が動くということはみなさんご存知だと思います。
具体的には息を吸うと肋骨は開き、息を吐くと肋骨は閉じます。肋骨は背骨と連結しておりますので、呼吸に合わせて背骨も動きます。
息を吸う(吸気)…肋骨は開く、背中は丸まる
息を吐く(呼気)…肋骨は閉じる、背中は反る
ラジオ体操で代表されるような深呼吸とはイメージが異なりますが、試しに背中を丸めた時と反らした時で、どちらの方がより多く息が吸えるかということを確認していただけると納得していただけると思います。
側弯症の場合、どちらかの肋骨が潰れるようになっていることがあります。
たとえば体が右に傾いている場合…
右の肋骨が閉じてしまい、右の肺には十分に息が入りません。主観的には大きく息を吸うと、左の肋骨ばかりが動いて右は何も感じないといった感覚になります。
右の肋骨を開き背骨の歪みを改善するためには、
①座った状態で右足を伸ばす
②右のお尻に体重をかける
③右手を万歳する
④大きく息を吸い、右の肋骨を開く
このように呼吸と手足の連動を組み合わせた体操を行いうことで、今まで使うことができていなかった右の肋骨や背筋の活動を促し、姿勢改善を指導いたします。呼吸法によって肋骨・背骨への連動が改善することで体の内側から歪みの調整を行い、体操の習慣を身につけていただくことが姿勢改善や変形予防を行う上で最も重要になります。
④自分の体と向き合い、長くセルフケアを継続しよう
側弯症のリハビリを進める上で最も大切なことは、短期的な効果に振り回されず、継続しながら自分の体との向き合い方を深めていくこと。
変形は、長い期間をかけてできた自分の体のクセの蓄積です。脳で認識する自分の体と、実際の状態に大きな差ができた結果、生じた体のクセは短期間で修正することは難しいということをご理解ください。むしろ、今から新しいスポーツに挑戦すると思っていただけるといいと思います。新しい体の使い方を1から身につけるためにはそれなりの時間がかかりますし、ご自分で努力していただく必要もあります。
当スタジオでは、お一人でも簡単に行える「ゲンテン体操」を理学療法士が個別に指導しております。
ご相談に来ていただいた方全員に、「寝たまま行えるゲンテン体操」の資料を差し上げております。
ぜひご来店いただき「背骨の歪みを改善したい」とご相談ください。
【側弯症 悩み相談#1】側弯症で悩んでいます。手術ギリギリの状態でどんな運動をすればいいのか教えてほしい。